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大黒屋光太夫 上下巻

●勧められて図書館で借りた。私が読んだのは毎日新聞社出版のもの。
●江戸時代。伊勢の船頭・光太夫は、16人の仲間と共に神昌丸に乗りこみ、白子浦から江戸へと出航した。ところが、航行中に大時化に会い、船は半壊。そのまま海上を漂流し、7カ月後にロシアのアムチトカ島へ着く。その後、ロシア国内を約10年間旅して、やっと江戸に帰ってくる。生還したのは光太夫と磯吉の2名のみだった。

ぐはー。疲れた。おもしろかった。読み応えがあったです。新聞に連載されていたそうですが、毎日読んでいたら、もっと感動したに違いないよ。
仲間が一人、また一人と死んでいく中、
「日本に帰りたい」「帰らねばならない」と必死で願い続けた光太夫。過酷な大地で延々10年間も大冒険。…こんなの帰国したときに感動しないわけないじゃないか。
大冒険の内容もいちいち濃いのだよ。最初の大時化は、本当に恐ろしくて大迫力。羆嵐のときも思ったけど、自然の恐ろしさを描くのがうまいよなぁ。その後もドラマは続き、船を一人で陸へと導いたと言っても過言ではないベテラン船頭の死、原住民とロシア人の血みどろの抗争に巻き込まれ、ロシア人と協力して船をつくり、オホーツクでは若い仲間が地元の美少女と危うく結婚しそうになり、荒野を行進中に仲間が凍傷にかかり(ここの描写がとてつもなく恐ろしい)、イルクーツクでは絶望した仲間がロシア正教に改宗(日本では改宗した者は国に入れない=ロシア永住決定)、エカチェリーナとの奇跡の謁見が叶い、やっと日本に帰れたと思ったら北海道で仲間1人死亡、江戸へ帰ったときは光太夫と磯吉だけになっていた。
ああ、全部書いてしまった。

光太夫は、「ロシアに漂着して日本に帰国できた者は一人もいない」という事実を知りながら、現地の超善人学者キリロ様の協力で、3度も願書を書くのだけど、全部却下・無視されてしまう。業を煮やしたキリロが光太夫をエカチェリーナの住むペテルブルグに連れていくんだけど、そこでも願書は無視されてしまう。運悪くエカチェリーナは避暑に行ってしまったのだった。ほとほと疲れきってついに絶望した光太夫が「もうええわ…イルクーツクに戻って死ぬわ…」と、初めて弱音をはいたら、キリロは平然と「なんで?」と首をかしげて「これから始まるというのに、何弱気になってんの」と、光太夫を避暑地へ連れていく。


 なんという人なのか、と思った。光太夫のために再三願書を提出することにつとめ、わざわざペテルブルグに私費で自分を連れて来て用心に願書を出し、反応がないと知ると、皇帝の後を追って別宮のある地に行こうという。そのようなことをしても、キリロ自身にはなんの益もなく、ひたすら光太夫の切望する帰国を実現させようとしているだけなのだ。
 光太夫は、キリロの諦めということを知らぬ不屈な強靭さに驚きを感じた。
 光太夫自身、帰国を切に願ってペテルブルグまできたが、期待できるものはなにもなく、一転してあきらめの境地に身を置くようになった。諦めは一種の心の安らぎをもたらし、なすべきことはしたのだから、もうこれでいいのだという思いがしている。しかし、キリロは、諦めることなど論外として、さらに目的を果たすため力をつくそうと強調している。あきらかにキリロは自分とは全く異質の人間で、それはロシアというきびしい風土の広大な大地に培われたものなのか。
 光太夫は、顔をあげ、改めてキリロの顔を眺めた。
「コレ程努力シテモ、マダ諦メテハイケナイト言ウノデスカ」
 光太夫は、弱々しげな声で言った。
「ソウダ、スベテハコレカラ始マルノダ」
 キリロは、大きくうなずいた。


…このシーンが一番印象的だった。なんだか、私が何となく想像しているロシア人の魅力と合致して。光太夫も大概粘り強いと思うけど、何の得もないのに光太夫を助ける点と、全然屈する様子がない点は、キリロさま底なしに図太すぎる。怖い。この人怖い。ものごとをとらえる視点や時間軸が、全然ちがいそうだよ。

全体を通してしみじみ思ったのは、光太夫が幸運すぎるってこと。これの前に、司馬遼太郎の「空海」を読んで「幸運すぎるよ空海」と思ったけど、それと同じ感覚。
もちろん本人の才覚が抜きんでいたというのは疑いようもないけど、それにしても、やはり歴史に残るような人物は才覚だけでは無理だ。幸運だ。あまりにも幸運すぎる。過酷すぎる経験を味わった光太夫を幸運だというのは変かもしれないけど、その運命は、ちょっと神に導かれたとしか思えない。空海とちがって、その後の社会や人間にとてつもない影響を与えたわけではないけどね。神さまが人を選ぶ尺度は、そういうことではないのかもしれない。

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